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音楽の散歩道9 癒しとは

アッコルド編集長 青木 日出男​​

↓マリエン協会(ベルリン)

東京都町田市に小山田緑地(おやまだりょくち)という緑地公園がある。

​この季節は、まさに緑地と呼ぶに相応しい時期で、一年中でもっとも緑のうつくしい時期だ。

 

相模原市と多摩市の間で、広大な多摩丘陵の中でも、まだまだ自然が残されているすばらしいところだ。まず、空気が美味い。

 

時々、観察のイベントや癒しの散歩のようなことも行なわれている。

 

癒やしと言えば、森鴎外が舞姫と出会ったベルリンのマリエン教会でフォーレのレクイエムを聴いときのことを思い出す。

 

マリエン協会は大変に厳粛な雰囲気の建物だ。すぐ傍の旧東ベルリン時代に建てられたテレビ塔が異様で、立ち並んだ姿にはあまりにも違和感があった。

 

演奏者は入り口の上方のパイプ・オルガンの辺りに位置していた。ゆえに聴衆の背後から演奏が聞こえてくる。横向きの席もあるので、演奏者を見たい人はその席に座る。

 

独特な響きから醸し出される荘厳な雰囲気に身も心も浸かり、正に心が洗われる思いだった。フォーレの好きな方には容易に想像できると思う。フォーレの楽曲には癒やされる。フォーレの作品は晩年になってくると、かなり変化してきて、ちょっとよく分からないが。

 

聴衆を見ると、皆、癒やしを求めているように思えた。頭を抱え込んで聴いたり、横を向いて頭に手を当て、いかにもつらいといった感じの人、……何をそんなに悩んでいるの? と聞いてみたくなる。

 

悩まなくてもいいことを悩んだり、悩むべきこともしっかり悩んだり、人間は悩みに事欠かないが、あとから振り返れば、あのときは別に悩む必要はなかったな、と思うことがよくある。悩むというより雑念や忙念にとらわれるということなのだろう。どちらにしても同じ生きるのであれば、そういったものから意志の力で解脱した方が得策であると思った。

 

小山田緑地は、野鳥、野草観察にももってこいのところで、6月には場所によっては蛍も観ることができる。

 

 

© 2014 by アッコルド出版

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