今日のグルーヴ〈467〉
役者と俳優との違いは何か、ということをいつも考えるが、演奏者も、役者タイプと俳優タイプに分かれるような気がする。
役者というのは、自分の個性を消し、様々な個性を演じ分けられる人であり、対して俳優は、様々な個性を演じつつも、自分の個性を活かしている。私小説的である。
とすれば、役者タイプの演奏者というのは、作曲家、時代、様式等を演奏し分ける人、ということになるのだろう。
俳優タイプの演奏者というのは、どんな作品でも、自分のスタイルで演奏する人、ということになるのだろう。
しかし、どちらにしても厳密な境などはなく、どちらに比重がかかっているか、ということになるのだろう。
どんな役でも演じる役者というのは、役者を自負する人にとっては、人生を何倍も味わっているという点で楽しいに違いない。
どんな楽曲でも演奏できる演奏者も同様で、バロックからコンテンポラリーまで、あらゆる楽曲を演奏できる機会のある人も同様である。
しかし、己自身の個性を表現しようとするならば、自分に合った楽曲を活用するか、オリジナルの楽曲を自ら作曲する、ということになるのだろう。
俳優タイプは自己表現であり、役者タイプは自己実現、ということなのではない。
いずれにしても、演奏者は、俳優タイプと役者タイプの両方を演じる方が面白そうである。